0.今回の練習のねらい
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まず最初に、今回の練習のテーマを紹介し、目的を明確にしてもらいました。
僕が担当する個別指導は、2つの練習方法があります。
その日の練習の中で少ない技術に焦点を当てて技術的な成長に集中する「特定技術の向上練習」と、その後の部活動などでその選手の気づき、意識が高くなり、総合的なレベルアップのサポートとなるような「気づき力向上練習」です。
今回、サツキとメイの練習を担当できることになりましたが、頻繁に指導を担当することは難しいと思われるので、2人が持っている理解する力、集中力、向上心を信じて「気づき力向上練習」のスタイルをとることにしました。
紹介する内容のテーマは
「トップレベル選手への階段を上がるために重要な、練習や技術に対する“考え方”“捉え方”」
です。
単に技術の紹介だけでなく、技術をどこまで深く捉えるか、練習に対してどこまで意識を高められるか、このことを伝えることが今回のテーマです。
今回はメイの練習を中心に、サツキにサポート役を色々とお願いしました。サツキのお陰で非常に良い練習ができました。サツキちゃん、協力ありがとうございました。 |
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1.シュートの基本
<その1 当り前のレベルを高くする>
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まず、最初にシュートの基本の確認を行いました。
ここで、2人に紹介したかったのは、
「当り前のレベルをどこに設定するかで、技術の質は変わる」
ということです。
シュートは、
・10本中何本入ることが当たり前か
・外したシュートから気づき、修正できることが当たり前か
・試合で入ることが当たり前か
どこを当たり前にするかで、やる内容が変わってきますし、一本一本の集中力が変わってきます。
まずは「入ることが当たり前」、「落とさないシュート」をテーマに、基本的なボールの持ち方、構え、リフティング、フォロースルーを確認しました。
シュートが入るということは、ボールがリングに向かってまっすぐ、その距離に飛ぶことです。それがいつも出来るようなボールの持ち方、シュートフォームを作る必要があります。
メイのポイントは、ボールの持ち方です。ワンハンドなので、利き手側でシューティングラインを作ります。
右足とリングを結んだラインにボールを持つようにしましょう。2ハンドの頃の癖で、ボールをお腹の前で構えてしまっています。そうすると、右手のシューティングフィンガーがボールの中心をまっすぐ指せず、結局ボールを左右に曲げる原因になってしまいます。フォロースルーなどはだいぶ良くなってきたので、ボールの持ち方を注意して、お風呂場でのトレーニングを思い出して、繰り返し練習してみてください。
サツキはコーチも驚きのシュート率で、基本のシュートはだいぶ身についていました!ツーハンドですが、ボールはまっすぐ飛んでいるし、距離感もだいぶつかめてきているのでOKです! |
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2.連続ジャンプシューティング
<その2 技術は試合の状況で使えるように磨く> |
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シュートの基本と実戦のつなぎ目練習です。この練習で距離を変えながら確率良くシュートを決められるようにしていきましょう。
シュート練習というと、ついつい止まった状態でのシュート練習を想像してしまいますが、残念ながらそれだけでは「試合で決める」能力は身につきません。
かといって、実戦的な動きとディフェンスがついた練習ばかりでも確率は高まりません。
大事なことは、基本と実戦練習のバランスです。この連続ジャンプシューティングは、その中間のつなぎ目になる練習です。
この練習を行うことで、もっと基本を確認するべきか、実戦的に動きをつけて練習に入れるかが確認できます。
1.スナップだけのチェック
2.リフティングのチェック
3.キャッチのチェック
と3種類のチェック方法を紹介したので、この3つをチェックしながら、自分の技術の欠点を分析し、修正して、実戦練習に入るようにしましょう。 |
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3.キキムーブドリル
<その3 まず一番強いプレーを目指し、その“表”が止められた場合の“裏”を常に用意する> |
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メイの武器であるドライブインを磨く練習です。
オフェンスのドライブインの技術は、ゴールまで近づいて確率良くシュートを決めることが一番のねらいになります。そう考えると、オフェンスはゴールに向かってなるべく最短距離を進めることが一番強いプレーになります。1on1のディフェンスは、それを防ぎ、なるべくゴールに直進させず、遠回りをさせて、味方と協力してボールがゴールに近づかないようにするのがねらいになります。
メイのドライブインは非常に鋭く、大きな武器になると思います。その武器を使う上で、まずはディフェンスにとって一番嫌な、強いドライブインを心掛けましょう!
ディフェンスが良い守り方をして自分とゴールの間にしっかりと入っている場合は、この良いディフェンスの裏をついて攻めるようにします。ディフェンスがゴール側の良い位置にいる場合は、ゴールから離れるようにステップすることで一番ディフェンスから遠ざかれるのです。この遠ざかるステップを「キキムーブ」と呼んで練習しています。
キキバンダウェイという選手が得意なプレーだったから、キキムーブというそうです。
ディフェンスとの接触後にステップバックすると、ディフェンスはすぐにチェックには戻ってこれず、シュートのチャンスが広がります。
“表”である「ゴールに向かうドライブイン」を行っておらず、ゴールから遠ざかるコースにドライブしていると接触が起こりません。これだと、ゴールに向かえないばかりか、ステップバックしてもディフェンスに容易に守られてしまうのです。
まずは“表”を強くねらうこと、それがダメだった場合にその“裏”があるということを覚えておきましょう。 |
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4.ドライブインドリル
・パワーレイアップ
・ドライブ&ロール
<その4 より速く、より強く、より正確に、技術は磨き続ける> |
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さらに、ドライブインのレベルアップを目指した練習です。技術は、3つの段階で上達していきます。
初期段階:技術を紹介されて、はじめてできるようになるまでの期間
この期間は上達している感覚も強く、練習していて楽しい時期です。
中期段階:できるようになった技術を「より速く・より強く・より正確に」できるように磨く期間
この期間は反復して技術を磨く時期です。飽きっぽい選手はここで脱落してしまうので、一流の技術は身に付きません。
後期段階:ほとんど技術的な成長を実感できない期間
ここまでくると、練習をしていてもうまくなった感じがほとんど感じられなくなります。そのため、この段階に来てもまだ技術を向上させ続けられる人は、ほんの一握りです。飽くなき反復練習、その辛さに耐えられるだけの強いモチベーションが必要です。イチローやロナウジーニョといった超一流選手になるには、この段階を超える必要があります。
メイにとって、トップレベルの選手になるために大事なことは、中期段階を意識することです。出来るようになった技を“ただ出来る”だけでOKにせず、「より速く」「より強く」「より正確に」プレーできるように、磨いていく習慣をつけましょう。
パワーレイアップは、「力強く」を意識した練習です。力強さの中で、バランスを保って正確にシュートまで持って行けることが重要です。先ほどの練習ではディフェンスが良いポジションにいた場合のステップバックでしたが、今回はディフェンスがコースの正面に入ってきた場合のロールターンも練習しました。
このプレーも、ゆっくり、接触が弱い中でなら正確に行えていました。あとは、より力強い接触の中でできるか、よりスピードがある中で正確にできるか、そこがポイントになってくると思います。 |
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5.チョビ―ステップからのドライブイン
<その5 相手が守りづらいと思うような選手を目指す> |
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ドリブルからの仕掛け技を練習しました。メイの武器であるドライブインが、もっと試合中にしかけられるように、ディフェンスの状態を崩して仕掛ける練習です。
ここで、覚えてほしいことは、「相手が嫌がるような選手」になるということです。バスケットボールは相手がいるスポーツですから、相手が嫌がること、相手が守りづらい攻め、相手が攻めづらい守りを工夫していくことが重要です。
相手が守りにくいドライブインというのは、
・自分が何かに反応した瞬間に逆をいかれる
・動きが読みにくい
・緩急の幅が大きい
などなどです。
こういった相手が嫌がるドライブインを身につけるために、チョビ―ステップを紹介しました。相手にいつ加速するか分からないような、攻撃的な姿勢でプレーします。
この姿勢が重要です。守りの姿勢が習慣になってはいけません。ボールが取られてもいけませんから、いかにして攻めの姿勢のままボールを奪われないか、そして、緩急の仕掛けを上手に使えるか、その技術を磨いていくことがポイントです。
チョビ―ステップから加速する動きをフェイントに逆に抜くプレーも練習しました。これはかなりディフェンスが守りにくい技です。実戦で使えるレベルまで磨いていきましょう! |
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6.色々なドライブインステップ
・パワーステップ
・ギャロップステップ
・1ステップ
・ディレクションチェンジステップ
・スピードチェンジステップ
<その6 選択肢を持たなければ、判断はなく、判断がなければ、経験は少ない> |
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メイのプレーの特徴は、スピード感があることですが、逆に単調になりやすいという欠点もあります。ドライブ後のプレーに幅が広がるように、様々なステップを紹介しました。
今回は紹介をメインにしていますので、これらの技術を使いこなせるように、これから実戦でチャレンジしていってください!
「より速く、より強く、より正確に」も磨いて、どんどんレベルアップをさせていきましょう。
このように、ディフェンスに対して色々な選択肢があると知っていれば、工夫が生まれます。こういった工夫が経験を生むのです。色々な選択肢を持てるように、ビデオなどを見たり、試合を見に行ったりということも重要になってきます。 |
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7.スピードミートアウトからの1on1
・バランスチェック
・クイックショット
・クイックドライブ
<その7 トップスピードをフルスピードに近づける。試合中はフルスピードではなく、トップスピードでプレーする>
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フルスピードとは、自分が出せる最高のスピードです。トップスピードとは、自分がコントロールできる最大のスピードです。
いつでも止まれる、いつでも跳べる、いつでもスピンできる、そういったスピードのことをトップスピードといいます。技術が低いと、トップスピードはフルスピードよりもかなり遅くなってしまいます。いつでも止まれるというスピードの速さを高めるには、止まる技術を高めなければなりません。
フルスピードで試合中にプレーすると、プレーの正確さが下がりますから、試合中はトップスピードでプレーするようにしましょう。ということは、トップスピードでも相手を抜き去れるだけの能力を身につける必要があるのです。
一番バランスをとるのが難しいミートアウトのパスキャッチからクイックショット、クイックドライブを練習しました。こういった練習でトップスピードをフルスピードに近づけることが重要です。
ドライブインのスピード、ジャンプシュートのジャンプ、ボール運び中のドリブル、すべてトップスピードの速さで相手をやっつけられるようにしておきましょう。フルスピードにトップスピードを近づける練習は、先ほども紹介した「より速く、より強く、より正確に」という意識を常に持つことでも伸ばしていけます。
バランスやターンなどをそういったスピードの中で発揮できるように工夫していくことで、トップスピードが高められていきます。
いつもトップスピードでプレーしていると、フルスピード、フルパワーが高まらないので、ダッシュ練習の時やリバウンドジャンプの練習など、身体を使う練習の時は手を抜かないように意識しましょう。
10の力があって、トップスピードが8だとすれば、いつも8しか使っていないと身体は11の力に伸びません。10の力が11になるような身体の能力アップ、8のトップスピードが9になるような技術力アップ、こういった練習を大事にしてくださいね。 |
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8.1on2状況判断ドリル
<その8 良い判断は経験から生まれる。経験は愚かな判断から得られる。> |
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最後に、今日の総合練習です。一人目を抜き、二人目のディフェンスもかわしてシュートまでもっていってもらいました。
ボールを持った瞬間に、目の前のディフェンスは感じて、奥のディフェンスを確認しておく必要があります。そして、ディフェンスの動きを判断して効果的なステップをふめるようにします。
良い判断は経験から生まれます。経験は、愚かな判断から得られます。愚かな判断がなければ、経験は得られません。愚かな判断でも最初は良いのです。
判断をした上でプレーしてみて、うまくいったり、失敗したり、その積み重ねが良いプレーを作ります。
最初から失敗を恐れて、チャレンジすらしなければ、愚かな判断すら生まれません。
そして、経験も生まれず、結局は良い判断の土台は築かれないのです。だからいつまでも失敗を恐れ続けることになり、結果として能力が高まらないのです。失敗は続けないという気持ちさえあれば、あとは失敗しながら学んで行ければ良いのです。
失敗を恐れず、どんどんチャレンジを続けていってくださいね! |